パワーグリップは、握力補助や手のひらの保護ができる便利なトレーニングギアですが、パワーグリップは要らない、使えないという意見もあります。
実際パワーグリップには、トレーニングにおけるデメリットがいくつか存在します。それらデメリットを含めても、使うメリットの大きなトレーニングギアですが、デメリットを知ったうえで使う使わないの判断をするべきでしょう。
この記事では、パワーグリップのデメリットを中心に解説します。パワーグリップを用意するべきかどうかで迷っている方は、参考にして下さい。
なお、パワーグリップの使い方・選び方など詳しい情報はこちらの記事をどうぞ。
パワーグリップのメリットとは?
まずは、パワーグリップのメリットから簡単に解説します。
パワーグリップはダンベル・バーベルなどのグリップに巻き付けて使うトレーニングギアで、最大のメリットは握力の補助ができることです。
デッドリフトやチンニングなど身体に引き付ける動作を伴うトレーニングは、背中や上腕二頭筋の筋肉をメインで使いますが、同時にグリップを保持する握力も消耗してしまいます。
握力は前腕に由来する筋力です。前腕は体積が小さいため、脚・胸・背中と比べ発揮できる力も大きくありません。そのため、握力を消耗しやすい高重量トレーニングでは、鍛えたい大きな筋肉より先に前腕が疲れてしまい、しっかりと追い込むことができなくなるのです。
パワーグリップは、グリップの保持をベロ部分に負担させ、負荷を腕の方に逃がすため、自前の握力をほとんど消耗しません。高重量のプル系種目(引き付け)でも、握力がボトルネックとならず、最後までキッチリ追い込むとが可能になります。
また、パワーグリップのベロが緩衝材となり、素手で直接ローレット(滑り止め加工)に触れずに済むため、手のひらの保護の役割も果たせるのです。運動強度を高められるため、プル系種目にはかかせないトレーニングギアといえます。
「パワーグリップは要らない?」デメリットを解説
握力補助・手のひらの保護など、パワーグリップのトレーニングのメリットを知ったうえで、デメリットも見ていきましょう。
- 握力を鍛えることができない
- 内出血してしまう場合がある
- トレーニング中に外れると危険
- 扱える重量が落ちる場合がある
- 大会では使用できない
- 使っているのにマメ・タコができる
- 使うのが恥ずかしい
常にパワーグリップを使っていると握力を鍛えることができない
1番のデメリットは、パワーグリップの使用により握力を鍛える機会が減ってしまうことです。
パワーグリップを使うと、握力にかかる負荷が分散するため、自前の握力をほぼ消耗しません。そのため、握力の消耗を気にせず背中などの大きな筋肉を鍛えることができますが、本来使われるはずの前腕に刺激が入らなくなってしまうのです。
握力など前腕のトレーニングを別の種目で補う必要がでてくるため、パワーグリップを使うと前腕のトレーニング効率が低下すると考える人もいるかもしれません。
高重量になるとパッドがあっても手首に食い込んだり、擦れたりで内出血してしまう場合がある。
パワーグリップは、本来握力で受ける重量を、ベロやベルトで腕に逃がすトレーニング器具です。
握力はほとんど消耗しませんが、装着しパワーグリップのベルト部分が触れている手首や手の甲には大きな負担がかかります。
あつかう重量にもよりますが、人によっては手首に食い込んだパワーグリップが肌と擦れて、内出血してしまうケースがあるようです。症状としては、手首や手の甲に赤いポツポツができるようです。ポツポツにそこまで痛みはないようですが、意外と目立ちます。
高重量トレーニング中にパワーグリップが外れて支えを失うと危険
パワーグリップは、自分の握力で支えられない重量を扱えるようになるトレーニングギアです。逆に言えば、自力では困難な高重量を無理矢理パワーグリップで支えている状況でもあります。
そのため、トレーニング途中でパワーグリップが外れると非常に危険です。
例えばデッドリフト中に片側のパワーグリップが外れると、瞬間反対側の腕に重量が集中してしまいます。バランスを崩して転倒したり、場合によっては関節を伸ばすような怪我をするかもしれません。チンニング中なら、高い位置から落下するリスクもあります。
パワーグリップは、手首のベルトをマジックテープで留めていますが、経年劣化や汚れなどで粘着力も低下してしまいます。気が付かずに使用を続けていると、思わぬ事故になるケースもあるかもしれません。
バーのグリップ感覚がくるい、扱える重量が落ちる場合がある
これは人によりますが、パワーグリップを使うことで逆に重量が上がらなくなるケースがあるようです。
本来ダンベル・バーベルのバーは、手指で巻きこむようにグリップしますが。パワーグリップは、指を軽くそえる程度で済むため、グリップする手の形が変わってきます。
前腕が緊張しないため、狙った筋肉にフォーカスして鍛えらるのですが、人によってはグリップの感覚がくるってしまい、パワーグリップを使わないときよりも、扱える重量が落ちてしまうことがあるようです。
おそらく慣れれば解消されるとは思いますが、個人差が大きい部分でもあると思われます。
パワーリフティングの大会では使用できない
ベンチプレス・デッドリフト・スクワットなどの重量を競う、パワーリフティングの大会では、パワーグリップは基本使用できません。
IPF(国際パワーリフティング協会)などが主催する、パワーリフティングの大会では、握力を補助する器具を使用できないケースが大半です。これは、トレーニングギアの性能で競技結果に差が付くことを避けるためだと思われます。
デッドリフトなどを普段のトレーニングからパワーグリップありきで行っていると、大会で通用しなくなってしまいます。パワーリフティングの競技会で記録を狙っている方は、使わない方が良いかもしれません。
パワーグリップを使っているのにマメ・タコができる
デメリットというわけではありませんが、パワーグリップを使っていても手のひらのマメ・タコは完全には防げません。
パワーグリップは手のひらを保護出ますが、高重量のデッドリフトやチンニングは手のひらのかかる負担が、それ以上に大きいです。パワーグリップの内側で手のひらの皮が寄ってしまい、角質化してマメ・タコができる場合があります。
パワーグリップを使うのが恥ずかしい
少数意見だとは思いますが、パワーグリップが恥ずかしいと感じる方もいるようです。
トレーニング開始直後は、ほとんどのトレーニーがトレーニングギアを持っていません。歴が長くなるにつれ、トレーニングギアの存在やメリットを知り、トレーニングクオリティを高めるため自然と使いはじめます。そのため、パワーグリップなどのトレーニングギアを使っていると玄人感が出るのですが、
「トレーニング初心者がギアを使っていると、イキっているみたいで恥ずかしい」
と、日本人にありがちな発想をしてしまう方もいるようです。
トレーニングギアは怪我を予防し、トレーニング強度を高めるアイテムなので、変なプライドは出さず、後悔する前に使っちゃいましょう!
「臭い・痛い・壊れた・ちぎれる」パワーグリップの粗悪品に要注意
パワーグリップそのものの欠点ではありませんが、粗悪なパワーグリップをつかまされると、臭いや耐久性など色々なトラブルに悩まされます。これらのトラブルが原因で「パワーグリップは使えない」となってしまったケースもあるでしょう。
Amazonの中国系セラーのパワーグリップは要注意
パワーグリップはもちろんトレーニング用品全般に言えることですが、信頼できるメーカー・ブランドから購入することが大事です。知名度が高く販売実績のあるメーカー・ブランドを選んでください。
一方、おすすめしたくないのがAmazonに多い中国系のセラーです。
中国系セラーは、一見まともな製品を販売しているように見えても、質の悪い粗悪品の可能性があります。ブランド・メーカーとしての価値を高めてユーザーを囲い込むのではなく、粗悪品を大量に売り逃げし、荒稼ぎする戦略をとっています。また、工場の品質管理が甘く、製品の品質にばらつきが出やすい傾向にあるため、極端な不良品を引く可能性も高いです。
もちろん、中国系でも高品質かつ低価格な良心的なところはあります。しかし、ECサイトはステマが多く、ユーザー評価などもあてにならないため、中国系セラーで良品のパワーグリップを買えるかどうかはギャンブルになってしまうでしょう。
粗悪品をつかまされないための予防法に関しては、こちらの記事を参考にして下さい。
臭い&もろい&使えない
中国系セラーの粗悪なパワーグリップは、トラブルが多く報告されています。
特に多いのが、強烈なゴムの臭いがするケースです。中国では原価が安いため、リサイクルゴムが大量出回っています。リサイクルゴムは生成時に原材料・薬品の化学反応によって200種類以上の臭気成分が混ざりって、酷い臭いを発する場合があるのです。
使われている素材も安くて質の悪いものが多く、縫製なども適当で使った端からほつれていったり、洗うとすぐボロボロになってしまうなど、耐久性がないパワーグリップもあります。また、各部のサイズやデザインが実用的でなく、根本的に使えないレベルの製品もあるようです。
パワーグリップは必要に応じて使う
以上、パワーグリップのデメリットやトラブルを解説させていただきました。
パワーグリップは使うメリットの多いトレーニングギアなので、私個人としては「必要ない・使えない」という意見は否定します。しかし、握力が鍛えられない、素手のグリップ感覚がくるうなど、デメリットがあるのも確かでなので、パワーグリップに頼りきりなのは良くないでしょう。
トレーニング内容に応じて使用するかどうか判断するのが良いと思います。
また、新しいパワーグリップを検討している方は、おすすめパワーグリップ24選の記事もどうぞ。